「なぜビットコインは重要か」 by マーク・アンドリーセン

シリコンバレーで最も影響力があるベンチャーキャピタルの1つであるアンドリーセン・ホロウィッツを率いるマーク・アンドリーセンが語った「なぜビットコインは重要か」という記事を簡単に訳してみました。長かったんで雑な翻訳ですがお許しを。

[原文] Why Bitcoin Matters

[著者:MARC ANDREESSEN]
新しく奇妙なテクノロジーが現れた。一見どこからともなく現れたように見えるが、実は、名前も知られていない研究家たちの、20年に渡る懸命なR&Dの成果なのだ。

政治の理想主義者たちはそれに自由と革命のビジョンを描く。既得権益層はそれを軽蔑し馬鹿にする。

一方で、技術者やオタクたちは、それに釘付けになる。とてつもない可能性を見出し夜な夜なそれをいじくりまわすことに費やす。

最終的に、それを商業化しようという製品、会社、業界が世に出てきた。その影響はどんどん大きくなり、後に、なぜ最初からその巨大な影響力は明らかではなかったのか、という疑問を多くの人が抱くようになった。

どのテクノロジーについて私は話しているのか?1975年のパソコン?1993のインターネット?いや、2014年のビットコインだ。

ビットコインがベールを脱いだトピックだとは言い難いが、プレスや一般の人が考えるビットコインと、増え続ける技術者層が考えるビットコインには大きな差がある。この記事では、なぜこれだけ多くのシリコンバレーのプログラマーや起業家がビットコインに興奮しているのか、そして私が考えるその将来性について、説明したいと思う。

1つ目に、ビットコインはそもそも最も基本的なレベルで、コンピューターサイエンスにおけるブレイクスルーである。世界中の何千もの研究家たちによる、暗号学に関する40年の研究と、暗号型の通貨に関する20年の研究の成果である。

ビットコインは長い事コンピューターサイエンスの世界に存在したByzantine Generals Problemという問題への初めての実践的な解決策だ。B.G.P.を定義しているペーパーを引用するとそれは以下のような問題である。

“[想像してみよう] ビザンチン帝国の将軍たちが軍隊を引き連れて適地を歩き回る。コミュニケーション手段はメッセンジャーしか無いが、将軍たちは互いに納得のいく戦略を1つ決めないといけない。しかし、そのうちの何人かはもしかしたら彼らを混乱させようとしている裏切り者なのかもしれない。問題は、味方の将軍たちがちゃんと合意に至れるようなアルゴリズムを見つけだすことだ。”

もっと一般的に言うと、インターネットのような信頼のおけないネットワークにおいて、見知らぬ人とどうやって信頼を築きあげるかという命題をB.G.P. は提起している。

そんな問題の実践的な解決策がビットコインだ。ビットコインは、インターネットのユーザーが、固有のデジタル財産を他の人に転送することを、初めて可能にした。そしてその取引は安心安全で、誰もがそれが行われたことを確認でき、その正当性を誰も疑うことが出来ない。このブレークスルーの重要性は、どれだけ誇張しても言い過ぎることはないだろう。

どんな種類のデジタル財産が取引されているのだろう?デジタル署名、デジタル契約書、(物理的またはオンライン上のロックに対する)デジタル鍵、車や家などの物理的資産のデジタルな所有権、デジタルな株や債券…そしてデジタルマネー、が考えられる。

これらは全て、銀行やブローカーなどの仲介役を必要としない信頼のおけるネットワークで取引される。そして、資産の所有者のみが予め決められた受信者のみにそれを送信でき、その資産は1度に1つの場所にしか存在できず、いつでも好きな時に、誰でもその取引とその資産の所有権を確認できる、というようになっている。

どういう仕組みか?

ビットコインはインターネット上に広がった帳簿である。現金を払ったり、又は製品やサービスを売ったりしてある定められた帳簿の枠を買うことで、あなたはその帳簿に自分の名を連ねられる。その帳簿に加わりたい人にビットコインをトレードすることで、逆にあなたはその帳簿から売り抜けることができる。誰でも好きな時に売買できるのだ。承認もいらないし手数料もほとんどかからない。ビットコインの通貨自体は、単にその帳簿上の枠に過ぎず、現実世界の取引にもっと広く適用可能であることをのぞけば、証券取引所の会員権のようなものだ。

ビットコインは新しい決済システムである。その帳簿の枠の所有権をトレードするだけで、世界中の誰でも、他の誰かに、好きな額のビットコインを支払うことができる。送信者が額を打ち込み送る。受信者がその額を受けとる。承認はいらない。そしてほとんどの場合、手数料もかからない。

最後の部分は特に重要だ。ビットコインは、インターネット上に広がる決済サービスで初めて、手数料がゼロ又はほとんどかからないシステムだ。先進国でさえ、既存の決済システムはだいたい2、3%を取る。そして他の多くの国では、そのような決済システムは存在しないか、しても多額の手数料を取る。その点は後々触れる。

ビットコインは、デジタルな無記名証券である。お金や資産を事前の信託なしに互いに交換できる方法なのである。最もシンプルな場合、数字の列がメールやSMSで送られるだけなのだ。送信者は受信者を知る必要も信頼する必要もない。逆もしかりだ。更に、チャージバックもできない。この点が正に現金のようである。もし現金や資産があれば、それで支払うことができるが、持っていなければできない。これは新しい。デジタルの世界でこのようなものは存在しなかった。

ビットコインはデジタル通貨であり、その価値は2つのことに直接基づいている:帳簿を駆け巡る取引の量と速度からも分かるように、今現在のシステム人気、と将来のシステム利用への期待である。これが人々を混乱にまねく部分だ。ビットコインが何らかの価値を持つから人々はトレードをしているわけではない。彼らがビットコインを使って(いつでも、どこでも、不正や手数料なしで)トレードができるため、結果としてそれは価値を持つようになったのだ。

現時点で、ビットコインの価値が実際の取引量よりも、憶測によって支えられているというのは正しいだろう。しかし、同時に、その憶測がビットコインの価格を十分上げたために、それによる決済が可能になったとも言える。現実世界の決済量を支える前に、ビットコインはある程度の価値を持つ必要があった。新しいテクノロジーによくある、典型的な“卵が先か鶏が先か”の問題である。新しいテクノロジーは、相当価値を持たない限り価値はないのだ。憶測のおかげでビットコインの価値が上がったことで、本来より遥かに早くそれは実用性を持つことになった。

ビットコインの批判者は、それは一部の限られた消費者や店舗にしか使われないと言う。しかし、同じような批判は最初パソコンやインターネットについても言われていた。日に日に、世界中のより多くの消費者や店舗が、ビットコインを売買したり、使ったりしている。全体的な数字で見ればまだ少ないが、非常に早い速度で成長している。そしてビットコイン専用のツールやテクノロジーが発達していることで、更に使いやすいものになっているのだ。思い出そう、インターネットに繋がること自体が昔は技術的に難しかったが、今は違う。

ボラティリティが高いために店舗側はビットコインを受け取ることはないだろう、という批判も間違っている。ビットコインは完全に決済システムとして使うことができる。店舗はビットコインを一切持つ必要も無く、ビットコインのボラティリティにさらされる必要も無いのだ。どんな消費者や店舗でもビットコインをその他の通貨と好きな時に交換できるのだ。

オンライン上の取引にしても現実世界のそれにしても、なぜ店舗はビットコインでの支払いを受け取るのだろうか?特に今のようにビットコインで支払いたい消費者が少ない状態で。私のパートナーであるChris Dixonはこのような例をくれた。

“電子機器をオンラインで売るとしよう。このビジネスの利益率は通常5%未満であり、典型的な2.5%の決済システムだとマージンの半分を持っていってしまう。そのお金は本来、事業に再投資したり、消費者に還元したり、政府に税金として支払うものだ。あらゆる選択肢の中で、その2.5%を銀行に渡して、インターネット上を循環させようというのは最悪の選択だ。また、店舗は、国際決済の際にも壁にぶち当たることになる。もしあなたが好きな商品やサービスがあなたの国で売られていない場合、それは決済が原因であることが多い。”

更に、クレジットカード不正のリスクを取り除くという点で、店舗はビットコインに魅力を感じる。このタイプの不正は、多くの犯罪者が顧客の個人情報やクレジットカード情報を盗むことを促す。

ビットコインはデジタルな無記名署名なので、お店やそのお店から顧客情報を盗むような犯罪者が将来的にお金を盗もことにつながりそうな情報は、支払いの送信者から受信者に流れることはない。

クレジットカード不正は店舗、カード決済会社、銀行にとってとても大きな問題なので、オンライン不正発見システムは、実際は違っていても少しでも怪しいものがあるとすぐに取引を止めてしまう。結果として、このような不正が不可能なビットコインだったら何の心配も無く買い物ができたはずの注文の5〜10%を、多くのオンライン店舗が追い払っていることになる。それらは既に為された注文なので、本質的にはそれらが店舗にとって最もマージンの高い注文である。それらの注文をちゃんと処理できれば、多くの店舗の利益率改善につながる。

ビットコインの不正防止機能は、物理的な小売の店舗やその客にも役立つことになる。

例えば、ビットコインを使えば、ターゲット(アメリカのお店)から7000万人のカード情報を盗んだ巨大ハックは不可能だっただろう。これがその仕組みだ。

いつものようにカートに商品を詰め込みレジに向かう。しかし、クレジットカードを渡す代わりに、スマホを出してレジに置いてあるQRコードを読み取るのだ。そのQRコードには、あなたがターゲットにビットコインを送るのに必要な情報が含まれている。金額も含めて。スマホの “承認” をクリックして取引は終わりだ。(もしビットコインを一切持っていなければ、自分の口座のドルがビットコインに変換される)

ターゲットはビットコインという形でお金をもらえてハッピーだ。なぜならもし望むのならそれをすぐにドルに変えることもできるし、決済手数料はゼロまたはほとんどかかっていないからだ。ハッカーが個人情報を盗むことは不可能になるためあなたもハッピーだ。そして犯罪者はハッピーではない。(まぁ、もしかしたら犯罪者はそれでもハッピーになれるかもしれない。完全には安全では無い店舗のパソコン自体から直接盗もうとすることはできる。しかし、それが成功しても、消費者がお金や情報を盗まれるリスクはない。)

最後に、ビットコインは、匿名で送金して罪から逃れる犯罪者やテロリストにとって、悪行の避難所になる、というある批判者の主張について話そう。それは、センセーショナルな記事やテクノロジーへの不理解によって生み出された神話である。追跡可能なEmailのように、ビットコインは匿名ではなく、pseudonymous(ペンネーム的)である。更に、ビットコインのネットワーク上の全ての取引はトラックされ、ログに保存され、みんなが見ることができる。結果として、ビットコインは、現金、金、ダイヤモンドよりも、遥かに簡単に法的機関が追跡可能なのである。

ビットコインの未来は?

ビットコインは典型的なネットワーク効果であり、ポジティブなフィードバックループである。より多くの人がビットコインを使えば使うほど、それは全ての利用者にとって大きな価値を持つようになり、新しい利用者がそれを使うインセンティブも更に高まる。電話やネット、そしてeBayやFacebookのような人気ウェブサービス同様、ビットコインもネットワーク効果を持つのだ。

実際、ビットコインは4面性を持つネットワーク効果がある。自身が興味を持って参加した結果、ビットコインの価値を高めることに繋がる参加者が4タイプ存在するのだ。それらは、(1)ビットコインで支払いをする消費者、(2)ビットコインで支払いを受け取る店舗、(3)コンピュータを走らせ、全ての取引を処理や承認し、信頼できるネットワークの存在を可能にする “採掘者” 、そして(4)ビットコインで、又はビットコイン上に新しい製品やサービスを作ろうとする開発者や起業家、である。

これらネットワーク効果の4側面全てが、システム全体の価値を高めるために重要な役割を果たしているが、4番目が特に重要である。

シリコンバレーや世界中のあらゆる所で、以前は不可能だった新しい商品やサービスのアイデアの基盤として、何千ものプログラマーがビットコインを使っている。我々のベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツでも、金融業界で輝かしいトラックレコードを持つ少数の起業家ではなく、ホントに沢山の素晴らしい起業家たちが、ビットコインをベースに会社を作ろうとしているのを目の当たりにしている。

この理由だけで、ビットコインへの挑戦者は困難な戦いに直面するだろう。もしビットコインに取って代わるものがあるとすれば、相当大きな改善があり、それは今すぐ起こらなければならない。さもなくば、ネットワーク効果によってビットコインは支配的な地位を築くであろう。

ビットコイン関連のイノベーションで即座に明らかかつ大きな領域が1つあるとすれば、それは国際送金だろう。毎日、何億人もの低所得者たちが、外国に渡り厳しい仕事をして、そこで稼いだお金を母国の家族に送っている。世界銀行によれば年間4000億ドルを越える規模だそうだ。毎日、銀行や決済会社は、時には10%を越えるびっくりするような手数料を送金時に搾取しているのだ。

手数料がゼロか又はかからないビットコインに変更することで、これら移民者や移民者の家族の生活の質は高まる。実際、世界の貧しい国々の沢山の人に、これ以上に早く、ポジティブな効果を与えられるものを考えるのは難しい。

更に、一般的にビットコインは、世界中のより多くの人々を現代の経済システムに参加させるための強い力になる。世界中で大体20国くらいしか、完全に現代的な銀行と決済のシステムを持っているとは言えない。他の約175の国々は、まだまだである。結果として、多くの国の沢山の人々が、西洋で当然のこととされている商品やサービスにありつけない。完全にオンラインのサービスであるNetflixでさえ、40カ国くらいでしか使えないのだ。ビットコインは、誰でもいつでもどこでも使えるグローバルな決済システムとして、現代の経済システムの恩恵を世界中のみんなに届けるための強力なカタリストになるのだ。

そしてここアメリカでさえ、長い間認識されてきた問題がある。“unbanked”と呼ばれる銀行口座を持たない人たちが、普通の金融機関にお金を支払う際に、多額の手数料を取られることだ。ビットコインは、その問題に真っ向から勝負できる。そんな銀行口座を持たない人たちのために、手数料をかなり低めに抑えたサービスを提供すればいいのだ。

3番目の魅力的な使い道は、少額決済である。20年間に渡る挑戦にも関わらず、少額決済は不可能だった。なぜなら既存のクレジット/デビットや銀行のシステムでは、少額決済をまわすことはコスト効率が悪いからだ。(1ドルやそれ未満のがくの決済を考えてみよう)現状の手数料体系では経済的に小額決済は不可能だ。

しかしビットコインがあれば、それは突然超簡単になる。ビットコインは無限に割り切れるというシャレた性質を持っている。現状は小数点以下8桁だが、将来はもっと多くなる。なのでいくらでも小額のお金を任意に設定できるのだ。1000分の1ペニーなど。そしてそれを世界中の誰にでもタダ同然で送れる。

例えば、コンテンツのマネタイズについて考えてみよう。新聞のようなメディアビジネスがコンテンツに課金することに上手くいっていない理由の1つが、全てを課金するか(全てのコンテンツに対して定額購読させる)、全く課金しないか(これがネット上どこにでも見られる醜い広告につながる)の選択肢しか無いことである。ビットコインがあれば、1記事あたり、1セクションあたり、1時間あたり、1動画再生あたり、1アーカイブアクセスあたり、1ニュースアラートあたり、のように、突然、小額で任意の課金が可能になる。

ビットコインによる小額支払いの別の使い道として可能性があるのはスパム対策だ。Emailやソーシャルネットワークは、小額のビットコインが付与されていない限り、到着メールを拒否することができるようにすればいい。送信者が気にならない程度の額かつ、タダでとてつもない数のスパムを毎日送りつける業者が払うのをためらうくらいの額だ。

最後に、4番目の興味深い使い道として公共支払がある。数ヶ月前にニュースでこのアイデアに遭遇した。テレビで放送されたとあるスポーツイベントにいたある観客が、“ビットコイン送って!”という文字とQRコードが書かれたプラカードを持って立っていた。彼は人生で会ったことも無い人から、最初の24時間で2万5千ドル分のビットコインを受け取った。これは歴史上で初めて、対面又はテレビまたは写真上で誰かがサインを持ってるのを見て、その人にスマホから2クリックで送金できた瞬間である。QRコードの読み込んでクリックして送金するだけだ。

これがプロテスト活動にもたらす意味を考えよう。現在プロテストする人たちはテレビに写ってその思いを人々に伝えようとしている。これから彼らは、彼らに共感した人からお金を集められるようにサインを持ってテレビに写って、お金を集めようとするだろう。ビットコインは、最もお固く非資本主義的な政治者たちの夢を叶えることにも役立つ金融のテクノロジーなのだ。

これから来る何年かは、この新しいテクノロジーの周りで大きなドラマや興奮が生まれることだろう。

例えば、ある有力な経済学者はビットコインについて非常に懐疑的だ。しかし、前の連邦準備制度理事会議長だったベン・バーナンキは、ビットコインのような電子通貨について、 “もしそれが、より早く、安全で、効果的な決済システムになったとしたら、将来有望だろう。” と言った。そして1999年には、あの伝説的な経済学者であるミルトンフリードマンはこう述べた。 “欠けているがこれからすぐに発展していくものの1つに、電子マネーがある。インターネット上でAがBに、AがBをもしくはBがAを知ることなく、資金を送ることができる仕組みだ。私が20ドルを持ってあなたに渡したとする、しかし私のことを知らずしてあなたはそのお金を受け取るのだ。”

今日ビットコインを叩く経済学者は正しいのかもしれないが、私はベンとミルトンに賛成だ。

更に、どの国の銀行や決済に関する規制もビットコインのようなテクノロジーは予期していなかったため、規制に関する議論も尽きない。

しかし、私はみなさんにビットコインのとてつもない可能性について伝えられたと思う。単なる自由主義のおとぎ話やシリコンバレーでの過剰な熱狂ではなく、ビットコインは、インターネット時代に金融システムはどのようにあるべきか、というのを再想像する絶好の機会を提供してくれるのだ。そして、個人や事業にとって強力なシステムを再形成するカタリストにもなるのである。

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